舳倉島は能登半島の北約50㎞の日本海上の周囲5㎞ほどの小さな島。今回のツアーの目的はまずこの小さな島を知ることである。標高は約12m、北側は崖や岩礁が荒波を受け、南側に砂浜や漁港を抱える。およそ2000万年前に火山活動で誕生したが、氷河期の頃は半島と陸続きであったという。渡り鳥の休息地で多くの野鳥が観察される。また、天然のアワビ、サザエ、天草などに恵まれ「海女の島」として知られる。昭和30年代までは半島側に居住するが、夏場の漁の時期に島に住み込む二拠点居住をしていた。離島振興を背景に一時期定住が進んだが、今は急速に人口減少と高齢化が進み、空き家がかなり目立つ。民宿2軒、お店は無論ない。かつての賑わいが嘘のようである。
対岸にある輪島の街はどんなだろう。
輪島と言えば「輪島塗」「輪島朝市」「御陣乗太鼓」「キリコ祭り」で有名である。北前船の寄港地であり、戦国時代には温井氏の城下町として栄えた。江戸時代には加賀藩の外護もあり總持寺が永平寺と並び曹洞宗両本山を成していたという。現在までも門前町が残り、祭りが盛んなのも頷けよう。さて、漆の歴史は縄文早期に遡るが、輪島塗は江戸時代に会津の蒔絵師が技法を伝えたことで天下に名を馳せるまでになったとされるのにも驚きである。
能登半島海岸線は景色も素晴らしい。古くから塩づくりが始まり汲み上げ式塩田で体験ができるのも面白い。米が美味しく、酒蔵もたくさんある。千枚田の風景は維持する難しさを教えている。また、道の駅が旅行者の新たな休憩所となっているのだろうか。
天候に恵まれた旅であったが、門前町に朝市がたち、海の幸山の幸が何でも手に入る豊かさと夜の食事の盛り付けや創造的な仕上がりには、この地域の歴史と伝統を背負って新たな躍動が始まっていると確信するに至った。古きものと新しきものの織り成す美しさを。
@山ざき